法を用いている。かく清新な写生、取扱いを重要視した結果、次第に季感のうすい内容、形の散文的傾向さえうまれて来た。

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番傘さして来し郵便夫梅雨の宿   かな女
何時となしに木の実みなすて町近し   和香女
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 写生の為の写生句[#「写生の為の写生句」に傍点]。実在の真を習作的に詠んだ詠句も多い。

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花びらに深く虫沈め冬のばら   みさ子
蔓おこせばむかごこぼれゐし湿り土   久女
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 (3)[#「(3)」は縦中横] 動物写生[#「動物写生」に傍点]
 動物写生にも近代元禄天明の差異を見る。

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蝶々のかすませにくる広野かな   花讃
縁に出す芋のせいろや蝶々くる   かな女
花大根に蝶漆黒の翅あげて   久女
病蝶[#「病蝶」に傍点]や石に翅をまつ平ら   同
凍蝶[#「凍蝶」に傍点]や桜の霜を身の終り   星布
秋蝶[#「秋蝶」に傍点]や漆黒うすれ檜葉にとぶ   みさ子
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 花讃の句は蝶を点出して広野の長閑さを主観的によみ、かな女のは大正初
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