ス。」
 これで一通り訓戒が済んで、後《あと》は自慢話になった。先生も法律は晩学で、最初は如何にも辛かったが、その辛いのを辛抱したお蔭で、今日《こんにち》では内務の一等属、何とかの係長たることを得たのだという話を長々と聴かされて、私は痺《しびれ》が切れて、耐《こた》え切れなくなって、泣出しそうだった。
 辛《やッ》と放免されて、暗黒《くらやみ》を手探りで長四畳へ帰って来ると、下女が薄暗い豆ランプを持って来て、お前さん床を敷《と》ったら忘れずに消すのですよと、朋輩にでも言うように、粗率《ぞんざい》に言置いて行って了った。
 国を出る時、此家《ここ》の伯父さんの先生は、昔困っていた時、家《うち》で散々世話をして遣った人だから、悪いようにはして呉れまいと、父は言った。私も矢張《やッぱり》其気で便《たよ》って来たのだが、便《たよ》って来てみれば事毎に案外で、ああ、何だか妙な気持ちがする。
 私は家《うち》が恋しくなった……

          三十一

 私は翌日早速|錦町《にしきちょう》の某私立法律学校へ入学の手続を済ませて、其処の生徒になって、珍らしい中《うち》は熱心に勉強もしたが、其中
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