平凡
二葉亭四迷
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)今年《ことし》三十九になる。
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)私|位《ぐらい》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「勹/夕」、第3水準1−14−76]々《さっさ》と
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一
私は今年《ことし》三十九になる。人世《じんせい》五十が通相場《とおりそうば》なら、まだ今日明日《きょうあす》穴へ入ろうとも思わぬが、しかし未来は長いようでも短いものだ。過去って了えば実に呆気《あッけ》ない。まだまだと云ってる中《うち》にいつしか此世の隙《ひま》が明いて、もうおさらばという時節が来る。其時になって幾ら足掻《あが》いたって藻掻《もが》いたって追付《おッつ》かない。覚悟をするなら今の中《うち》だ。
いや、しかし私も老込んだ。三十九には老込みようがチト早過ぎるという人も有ろうが、気の持方《もちかた》は年よりも老《ふ》けた方が好い。それだと無難だ。
如何《どう》して此様《こん》な老
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