A若し声に腰が有るなら、その腰と思う辺《あたり》に力を入れて、「はい」という。父も母も宜しく申しましたというと、又「はい」という。何卒《どうぞ》何分願いますというと、一段声を張揚《はりあ》げて、「はアい」という。
三十
晩餐になって、其晩だけは私も奥で馳走になった。花模様の丸ボヤの洋灯《ランプ》の下《もと》で、隅ではあったが、皆と一つ食卓に対《むか》い、若い雪江さんの罪の無い話を聴きながら、阿父《とう》さん阿母《かあ》さんの莞爾々々《にこにこ》した面《かお》を見て、賑《にぎや》かに食事して、私も何だか嬉しかったが……
軈《やが》て食事が済むと、阿父《とう》さんが又主人になって、私に対《むか》って徐々《そろそろ》小むずかしい話を始めた。何でも物価|高直《こうじき》の折柄《おりから》、私の入《いれ》る食料では到底《とて》も賄《まかな》い切れぬけれど、外ならぬ阿父《おとっ》さんの達《たっ》ての頼みであるに因って、不足の処は自分の方で如何《どう》にかする決心で、謂わば義侠心で引受けたのであれば、他《ほか》の学資の十分な書生のように、悠長な考えでいてはならぬ、何でも苦
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