@いて苦しがって笑うのだ。私は真紅《まっか》になって黙っていた。
先刻《さっき》取次に出た女は其後《そのご》漸く下女と感付いたが、此時障子の蔭からヒョコリお亀のような笑顔《えがお》を出して、
「何を其様《そんな》に笑ってらッしゃるの?」
「だって……アハハハハ! ……古屋さんが……アハハハ! ……」
「あら、一寸《ちょっと》、此方《このかた》が如何《どう》かなすったの?」
無礼者奴《ぶれいものめ》がズカズカ部屋へ入って来た、而《そう》して雪江さんの笑いが止らないで、些《ちっ》とも要領を得ない癖に、訳も分らずに、一緒になってゲラゲラ笑う。
其時ガラガラという車の音が門前に止って、ガラッと門が開《あ》くと同時に、大きな声で、威勢よく、
「お帰りッ!」
形勢は頓《とみ》に一変した。下女は急に真面目になって、雪江さんを棄てて置いて、急いで出て行く。
雪江さんもまだ可笑《おかし》がりながら泪《なみだ》を拭《ふ》き拭き、それでも大《おおい》に落着いて後《あと》から出て行く。
主人の帰りとは私にも覚《さと》れたから、急いで起《た》ち上って……窃《こっ》そり窓から覗いて見た。
帰った人は
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