驕B雪江さんが其を明けて呉れたので、少し明るくなったから、尚お能《よ》く視廻《みまわ》すと、壁は元来何色だったか分らんが、今の所では濁黒《どすぐろ》い変な色で、一ヵ所|壊《くず》れを取繕《とりつくろ》った痕《あと》が目立って黄ろい球《たま》を描いて、人魂《ひとだま》のように尾を曳いている。無論一体に疵《きず》だらけで処々《ところどころ》鉛筆の落書の痕《あと》を留《とど》めて、腰張の新聞紙の剥《めく》れた蔭から隠した大疵《おおきず》が窃《そっ》と面《かお》を出している。天井を仰向《あおむ》いて視ると、彼方此方《あちこち》の雨漏りの暈《ぼか》したような染《しみ》が化物めいた模様になって浮出していて、何だか気味《きび》の悪いような部屋だ。
「何時《いつ》の間にか掃除したんだよ。それでも奇麗になったわ」、と雪江さんは部屋の中を視廻《みまわ》していたが、ふと片隅に積んであった私の荷物に目を留て、「貴方《あなた》の荷物って是れ?」と、臆面もなく人の面《かお》を視る。
私は狼狽《あわ》てて壁を視詰《みつめ》て、
「然うです。」
「机がないわねえ。私《あたし》ン所《とこ》に明いてるのが有るから、貸て
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