tの阿母《かあ》さんになって了った。
「厭だあ私《あたし》……だから此前の日曜にしようと言たのに、阿母《かあ》さんが……」といいながら座敷へ入って来て、始めて私が眼へ入ったのだろう。ジロジロと私の風体《ふうてい》を視廻して、膝を突いて、母の顔を見ながら、「誰方《どなた》?」
「此方《このかた》が何さ、阿父様《おとうさま》からお話があった古屋さんの何さ。」
「そう。」
 といって雪江さんは此方《こちら》を向いたから、此処らでお辞儀をするのだろうと思って、私は又倒さになって一礼すると、残念ながら又|真紅《まっか》になった。
 雪江さんも一寸《ちょっと》お辞儀したが、直ぐと彼方《あちら》を向いて了って、
「私《あたし》厭よ。阿母《かあ》さんが彼様《あん》な事言って行《い》かなかったもんだから……」
「だって仕方がなかったンだわね。私《あたし》だって彼様《あん》な窮屈な処《とこ》へ行《い》くよか、芝居へ行った方が幾ら好《い》いか知れないけど、石橋さんの奥様《おくさん》に無理に誘われて辞《ことわ》り切れなかったンだもの。好《い》いわね、其代り阿父様《おとうさま》に願って、お前が此間|中《じゅう》
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