ゥせぬので、
「伯父さんはお留守ですか?」
と不覚《つい》言って了った顔を、奥様はジロリと尻眼に掛けて、
「主人はまだ役所から退《ひ》けません。」
主人と厭に力を入れて言われて、じゃ、伯父さんじゃ不好《いけなか》ったのか知ら、と思うと、又私は真紅《まっか》になった。
ところへバタバタと椽側に足音がして、障子が端手《はした》なくガラリと開《あ》いたから、ヒョイと面《かお》を挙《あげ》ると、白い若い女の顔――とだけで、其以上の細かい処は分らなかったが、何しろ先刻《さっき》取次に出たのとは違う白い若い女の顔と衝着《ぶつか》った。是が噂に聞いた小狐《おぎつね》の独娘《ひとりむすめ》の雪江さんだなと思うと、私は我知らず又固くなって、狼狽《あわ》てて俯向《うつむ》いて了った。
「阿母《かあ》さん阿母さん」、と雪江さんは私が眼へ入らぬように挨拶もせず、華やかな若い艶《つや》のある美《い》い声で、「矢張《やっぱり》私の言った通《とおり》だわ。明日《あした》が楽《らく》だわ。」
「まあ、そうかい」、と吃驚《びっくり》した拍子に、今迄の奥様がヒョイと奥へ引込《ひっこ》んで、矢張《やっぱり》尋常《ただ
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