「が、何でも何処かの地方で代言《だいげん》をして、芸者を女房にして贅沢な生活をしていて、今一人は内務省の属官《ぞっかん》でこそあれ、好《い》い処を勤めている証拠には、曾て帰省した時の服装を見ると、地方では奏任官には大丈夫踏める素晴しい服装《なり》で、何《なに》しても金の時計をぶら垂《さ》げていたと云う。それで父も法律なら好かろうと納得したので、私は遂に法学研究のため斯うして汽車で上京するのだ。
二十六
東京へ着いたのは其日の午後の三時頃だったが、便《たよ》って行くのは例の金時計をぶら垂《さ》げていたという、私の家《うち》とは遠縁の、変な苗字だが、小狐《おぎつね》三平という人の家《うち》だ。招魂社の裏手の知れ難《にく》い家《うち》で、車屋に散々こぼされて、辛《やッ》と尋ね当てて見ると、門構は門構だが、潜門《くぐりもん》で、国で想像していたような立派な冠木門《かぶきもん》ではなかった。が、標札を見れば此家《ここ》に違いないから、潜《くぐ》りを開けて中に入ると、直ぐもう其処が格子戸作りの上り口で、三度四度案内を乞うて漸《やっ》と出て来たのを見れば、顔や手足の腫起《む
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