A動《やや》もすれば身を政治界に投ぜんとする風ありと雖も、是れ以ての外の心得違なり、青年は須《すべか》らく客気を抑えて先ず大《おおい》に修養すべし、大《おおい》に修養して而《しか》して後《のち》大《おおい》に為す所あるべし、という議論が載っていた。私は嬉しかった。早速此|持重説《じちょうせつ》を我物にして了って、之を以て実行に逸《はや》る友人等を非難し、而《そう》して窃《ひそか》に自ら弁護する料にしていた。
 斯ういう事情で此様《こん》な心持になっていたから、中学卒業後尚お進んで何か専門の学問を修めようという場合には、勢い政治学に傾かざるを得なかった。父が上京して何を遣《や》りたいのだと言った時にも、言下《ごんか》に政治学と答えた。飛んだ事だといって父が夫《それ》では如何《どう》しても承知して呉《くれ》なかったから、じゃ、法学と政治学とは従兄弟《いとこ》同士だと思って、法律をやりたいと言って見た。法律学は其頃流行の学問だったし、県の大書記官も法学士だったし、それに親戚に、私立だけれど法律学校出身で、現に私達の眼には立派な生活をしている人が二人あった。一人は何処だったか記憶《おぼえ》がな
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