闌ゥ送って呉れる筈なので、自分も一台の俥《くるま》に乗りながら、何は載ったか、何は……ソレ、あの、何よ……と、焦心《あせ》る程尚お想出せないで、何やら分らぬ手真似をして独り無上《むしょう》に車上で騒ぐ。
母も門口まで送って出た。愈《いよいよ》俥《くるま》が出ようとする時、母は悲しそうに凝《じっ》と私の面《かお》を視て、「じゃ、お前ねえ、カカ身体を……」とまでは言い得たが、後《あと》が言えないで、涙になった。
私は故意《わざ》と附元気《つけげんき》の高声《たかごえ》で、「御機嫌よう!」と一礼すると、俥《くるま》が出たから、其儘|正面《まむき》になって了ったが何だか後髪を引かれるようで、俥《くるま》が横町を出離れる時、一寸《ちょっと》後《うしろ》を振向いて見たら、母はまだ門前に悄然《しょんぼり》と立っていた。
道々も故意《わざ》と平気な顔をして、往来を眺めながら、勉《つとめ》て心を紛らしている中《うち》に、馴染の町を幾つも過ぎて俥《くるま》が停車場《ステーション》へ着いた。
まだ発車には余程|間《あいだ》があるのに、もう場内は一杯の人で、雑然《ごたごた》と騒がしいので、父が又|狼狽
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