sあわ》て出す。親しい友の誰彼《たれかれ》も見送りに来て呉れた。其面《そのかお》を見ると、私は急に元気づいて、例《いつ》になく壮《さかん》に饒舌《しゃべ》った。何だか皆が私の挙動に注目しているように思われてならなかった。無論友達は家《うち》で立際《たちぎわ》に私の泣いたことを知る筈はないから……
軈《やが》て発車の時刻になって、汽車に乗込む。手持無沙汰な落着かぬ数分《すふん》も過ぎて、汽笛が鳴る。私が窓から首を出して挨拶をする時、汽車は動出《うごきだ》して、父の眼をしょぼつかせた顔がチラリとして直ぐ後《あと》になる、見えなくなる。もうプラットフォームを出離れて、白ペンキの低い柵が走る、其向うの後向《うしろむ》きの二階家が走る、平屋が走る。片側町《かたかわまち》になって、人や車が後《あと》へ走るのが可笑《おか》しいと、其を見ている中《うち》に、眼界が忽ち豁然《からっ》と明くなって、田圃《たんぼ》になった。眼を放って見渡すと、城下の町の一角が屋根は黒く、壁は白く、雑然《ごたごた》と塊《かた》まって見える向うに、生れて以来十九年の間《あいだ》、毎日仰ぎ瞻《み》たお城の天守が遙に森の中に聳え
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