sおやおや》の大恐慌となった。父も此一件から急に我《が》を折って、彼方此方《あちこち》の親類を駈廻《かけまわ》った結果、金の工面《くめん》が漸く出来て、最初は甚《ひど》く行悩んだ私の遊学の願も、存外難なく聴《ゆる》されて、遂に上京する事になった時の嬉しさは今に忘れぬ。
二十四
愈《いよいよ》出発の当日となった。待ちに待った其日ではあるけれど、今となっては如何《どう》やら一日位は延ばしても好《い》いような心持になっている中《うち》に、支度はズンズン出来て、さて改まって父母《ちちはは》と別れの杯《さかずき》の真似事をした時には、何だか急に胸が一杯になって不覚《つい》ホロリとした。母は固《もと》より泣いた、快活な父すら目出度い目出度いと言いながら、頻《しきり》に咳をして涕《はな》[#「涕」はママ]を拭《か》んでいた。
誂《あつら》えの俥《くるま》が来る。性急《せっかち》の父が先ず狼狽《あわ》て出して、座敷中を彷徨《うろうろ》しながら、ソレ、風呂敷包を忘れるな、行李は好《い》いか、小さい方だぞ、コココ蝙蝠傘《こうもりがさ》は己《おれ》が持ってッてやる、と固《もと》よ
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