Cがして、立止って其の後姿を見送っていると、忽ち背後《うしろ》でガラガラと雷の落懸《おちかか》るような音がしたから、驚いて振向こうとする途端《とたん》に、トンと突飛されて、私はコロコロと転がった。
「危ねい! 往来の真ン中を彷徨《うろうろ》してやがって……」とせいせい息を逸《はず》ませながら立止って怒鳴り付けたのは、目の怕《こわ》い車夫であった。
車には黒い高い帽子を冠《かぶ》って、温《あった》かそうな黄ろい襟の附いた外套を被《き》た立派な人が乗っていたが、私が面《かお》を顰《しか》めて起上《おきあが》るのを尻眼に掛けて、髭《ひげ》の中でニヤリと笑って、
「鎌蔵《かまぞう》、構わずに行《や》れ。」
「へい……本当《ふんと》に冷りとさせやがった。気を付けろ、涕垂《はなた》らしめ! ……」
と車夫は又トットッと曳出した。
紳士は犬殺しでない。が、ポチを殺した犬殺しと此人と何だか同じように思われて、クラクラと目が眩《くら》むと、私はもう無茶苦茶になった。卒然《いきなり》道端《みちばた》の小石を拾って打着《ぶっつ》けてやろうとしたら、車は先の横町へ曲ったと見えて、もう見えなかった。
パ
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