鰍ニ廻ったポチの姿が、顕然《まざまざ》と目に見えるような気がする。熱い涙がほろほろ零《こぼ》れる、手の甲で擦《こす》っても擦っても、止度《とめど》なくほろほろ零《こぼ》れる。

          十九

 ポチが殺されて、私は気脱けしたようになって、翌日は学校も休んだ。何も自分が罪を犯したでもないのに、何となく友達に顔を見られるのが辛くッて……
 午過《ひるすぎ》にポチが殺されたという木村という家《うち》の前へ行って見た。其処か此処かと尋ねて見たけれど、もう其らしい痕《あと》もない。私は道端に彳《たたず》んで、茫然としていた。
 炭屋の老爺《じい》やの話だと、うッかり寝転んでいる所を殺されたのだと云う。大方|昨日《きのう》も私の帰りを待ちかねて、此処らまで迎えに出ていたのであろう。待草臥《まちくたび》れて、ドタリと横になって、角《かど》のポストの蔭から私の姿がヒョッコリ出て来はせぬかと、其方ばかりを余念なく眺《なが》めている所へ、犬殺しが来たのだ。人間は皆私達親子のように自分を可愛がって呉れるものと思っているポチの事だから、犬殺しとは気が附かない。何心なく其面《そのかお》を瞻上《みあ
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