\―ね、今日《こんにち》人情としましても。それを、貴女《あなた》……いや、どうも、ああいう手合に逢っちゃ敵《かな》いませんて、卒然《いきなり》匿《かく》してた棒を取直して、おやッと思う間に、ポンと一つ鼻面を打《ぶ》ちました。そうするとな、お宅のは勃然《むっくり》起きましてな、キリキリと二三遍廻って、パタリと倒れると、仰向きになってこう四足《よつあし》を突張りましてな、尻尾でバタバタ地面《ちべた》を叩いたのは、あれは大方|苦《くるし》がったんでしょうが、傍《はた》で見ていりゃ何だか喜んで尻尾を掉《ふ》ったようで、妙な塩梅《あんばい》しきでしたがな、其処を、貴女《あなた》、またポカポカと三つ四つ咽喉《のど》ン処《とこ》を打《ぶ》ちますとな、もう其切《それっき》りで、ギャッともスウとも声を立て得ないで、貴女《あなた》……」
私はもう後《あと》は聴いていなかった。誰《たれ》を憚《はばか》る必要もないのに、窃《そっ》と目立たぬように後方《うしろ》へ退《さが》って、狐鼠々々《こそこそ》と奥へ引込《ひっこ》んだ。ベタリと机の前へ坐った。キリキリと二三遍廻ったという今聞いた話が胸に浮ぶと、そのキリキ
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