ニ、腋の下からまだ乳首に有附かぬ兄弟が鼻面で割込んで来る。奪《と》られまいとして、産毛《うぶげ》の生えた腕を突張り大騒ぎ行《や》ってみるが、到頭|奪《と》られて了い、又其処らを尋ねて、他《ほか》の乳首に吸付く。其中《そのうち》にお腹も満《くち》くなり、親の肌で身体も温《あたた》まって、溶《とろ》けそうな好《い》い心持になり、不覚《つい》昏々《うとうと》となると、含《くく》んだ乳首が抜けそうになる。夢心地にも狼狽《あわて》て又吸付いて、一しきり吸立てるが、直《じき》に又他愛なく昏々《うとうと》となって、乳首が遂に口を脱ける。脱けても知らずに口を開《あ》いて、小さな舌を出したなりで、一向正体がない……其時忽ち暗黒《くらやみ》から、茸々《もじゃもじゃ》と毛の生えた、節くれ立った大きな腕がヌッと出て、正体なく寝入っている所を無手《むず》と引掴《ひッつか》み、宙に釣《つる》す。驚いて目をポッチリ明き、いたいげな声で悲鳴を揚げながら、四|足《そく》を張って藻掻《もが》く中《うち》に、頭から何かで包まれたようで、真暗になる。窮屈で息気《いき》が塞《つま》りそうだから、出ようとするが、出られない。久《
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