@何《どう》とかして、掃溜《はきだめ》の隅で如何《どう》とかしている処を、犬に吠付かれて蒼くなって逃げたとか、何とか、その醜穢《しゅうわい》なること到底筆には上せられぬ。それも唯其丈の話で、夫だから如何《どう》という事もない。君、モーパッサンの捉まえどこだね、という位《ぐらい》が落だ。
これで最う帰るかと思うと、なかなか以て! 君ねえ、僕はねえと、また僕の事になって、其中《そのうち》に世間の俗物共を眼中に措《お》かないで、一つ思う存分な所を書いて見ようと思うという様な事を饒舌《しゃべ》って、文士で一生貧乏暮しをするのだもの、ねえ、君、責《せめ》て後世にでも名を残さなきゃアと、堪《たま》らない事をいう。プスリプスリと燻《いぶ》るような気※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《きえん》を吐いて、散々人を厭がらせた揚句に、僕は君に万斛《ばんこく》の同情を寄せている、今日は一つ忠告を試みようと思う、というから、何を言うかと思うと、「君も然う所帯染みて了わずと、一つ奮発して、何か後世へ残し玉え。」
こんなのは文壇でも流石《さすが》に屑の方であろう。しかし不幸にして私の友人は大抵屑
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