、ウンというンだわ、と教えられて、じゃ、ウンと言って、可笑《おかし》くなって、不覚《つい》笑い出す。此方が勘ちゃんに頭を打《は》られるより余程《よッぽど》面白い。それに女の児《こ》はこましゃくれているから、子供でも人の家《うち》だと遠慮する。私|一人《ひとり》威張っていられる。間違って喧嘩になっても、屹度《きッと》敵手《あいて》が泣く。然うすればお祖母《ばあ》さんが謝罪《あやま》って呉れる。
女の児《こ》と遊ぶのは無難で面白いが、併しそう毎日も遊びに来て呉れない。すると、私は退屈するから、平地《へいち》に波瀾を起して、拗《すね》て、じぶくッて、大泣に泣いて、而《そう》してお祖母《ばあ》さんに御機嫌を取って貰う。
七
……が、待てよ。何ぼ自然主義だと云って、斯う如何《どう》もダラダラと書いていた日には、三十九年の半生《はんせい》を語るに、三十九年掛るかも知れない。も少し省略《はしょ》ろう。
で、唐突ながら、祖母は病死した。
其時の事は今に覚えているが、平常《いつも》の積《つもり》で何心なく外《そと》から帰って見ると、母が妙な顔をして奥から出て来て、常《いつ
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