ヤ《ま》ならお酌もして呉れる、お糸さんのお酌で、酒を飲んで酔えば、私にだって些《ちっ》とは思う事も言えて打解《うちとけ》られる。思う事を言って打解《うちと》けて如何《どう》する気だったか、それは不分明だったけれども、兎に角|打解《うちとけ》たかったので、酒を命じたら、果してお糸さんが来て呉れて、思う通りになった。
「じゃ、何ですね」、と未だ一本も明けぬ中《うち》から、私は真紅《まっか》になって、「貴女《あなた》は一杯喰わされたのだ。」
「大喰《おおく》わされ!」とお糸さんは烟管《きせる》を火鉢の角《かど》でポンと叩いて、「正可《まさか》女房子《にょうぼこ》の有る人た思いませんでしたもの。好加減《いいかげん》なチャラッポコを真《ま》に受けて、仙台くんだり迄引張り出されて、独身《ひとり》でない事が知れた時にゃ、如何様《どんな》に口惜《くや》しかったでしょう。寧《いっ》そ其時帰ッ了《ちま》や好かったんですけど、帰って来たって、家《うち》が有るンじゃ有りませんしさ、人の厄介《やっかい》になって苦労する位なら、日陰者でもまだ其方が勝《まし》かと思ったもんですからね、馬鹿さねえ、貴方《あなた》、言
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