ネかった。私は又嬉しくなって、此様《こん》な事なら最《もっ》と早く敬意を表すれば好かったと思った。
お糸さんは床を敷《と》って了うと、火鉢の側《そば》へ膝行《いざ》り寄って火を直しながら、
「本当《ほんと》に嘸《さぞ》御不自由でございましょうねえ、皆《みんな》気の附かない者ばかりの寄合《よりあい》なんですから。どうぞ何なりと御遠慮なく仰有《おっしゃ》って下さいまし。然う申しちゃ何ですけど、他《ほか》のお客様は随分ツケツケお小言を仰《おっ》しゃいますけど、一番さん(私の事だ)は御遠慮深くッて何にも仰《おっ》しゃらないから、ああいうお客様は余計気を附けて上げなきゃ不好《いけない》。本当《ほんと》にお客様が皆《みんな》一番さんのようだと、下宿屋も如何様《どんな》に助かるか知れないッてね、始終《しょっちゅう》下でもお噂を申して居《お》るンでございますよ……」
無論半襟二掛の効能《ききめ》とは迂濶《うかつ》の私にも知れた。平生の私の主義から言えば、お糸さんは卑劣だと謂わなければならんのに、何故だか私は左程にも思わないで、唯お糸さんの媚《こ》びて呉れるのが嬉しかった。
小女《ちび》がバタバタ
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