ナ来たのはお竹どんで、お糸さんは笑声が余所の部屋でするけれど、顔も見せない、私は何となく本意《ほい》なかった。
待侘びて独りで焦《じ》れていると、軈《やが》て目差すお糸さんが膳を下げに来たから、此処ぞと思って、極《きま》りが悪かったが、思切って例の品を呈した。大《おおい》に喜ぶかと思いの外、お糸さんは左《さ》して色を動かさず、軽く礼を言って、一寸《ちょっと》包みを戴いて、膳と一緒に持って行って了った。唯|其切《それぎり》で、何だか余り飽気《あっけ》なかった。
何時間|経《た》ったか、久《しば》らくすると、部屋の障子がスッと開《あ》いた。振向いて見ると、思いがけずお糸さんが入口に蹲《うずく》まって、両手を突いて、先刻《さっき》の礼を又言ってお辞儀をする。私は何となく嬉しかった。お床を延べましょうかというから、敷《と》って呉れというと、例の通り戸棚から夜具を出す時、昨夜《ゆうべ》も今朝も手に掛けて知っている筈の枕皮《まくらがわ》の汚に始めて気が附いて、明日《あした》洗いましょうという。なに、洗濯屋に出すから好《い》いと言っても、此様《こん》な物を洗うのは雑作《ぞうさ》もないといって聴か
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