X《はす》の糸のようになって、此世を離れて暗い無限へ消えて行きそうになる時の儚《はかな》さ便りなさは、聴いている身も一緒に消えて行きそうで、早く何とかして貰いたいような、もうもう耐《たま》らぬ心持になると、消えかけた声が又急に盛返して来て、遂にパッと明るみへ出たような気丈夫な声になる。好《い》い声だ。節廻しも巧《たくみ》だが、声を転がす処に何とも言えぬ妙味がある。ズッと張揚げた声を急に落して、一転二転三転と急転して、何かを潜って来たように、パッと又|浮上《うきあが》るその面白さは……なぞと生意気をいうけれど、一体|新内《しんない》をやってるのだか、清元《きよもと》をやってるのだか、私は夢中だった。
 俗曲《ぞっきょく》は分らない。が、分らなくても、私は大好きだ。新内でも、清元でも、上手の歌うのを聴いていると、何だか斯う国民の精粋とでもいうような物が、髣髴《ほうふつ》として意気な声や微妙な節廻しの上に顕《あら》われて、吾心の底に潜む何かに触れて、何かが想い出されて、何とも言えぬ懐かしい心持になる。私は之を日本国民の二千年来此生を味うて得た所のものが、間接の思想の形式に由らず、直《ただち》
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