アそ臍《ほぞ》を噬《か》むけれど、追付《おッつ》かない。然るに、私は接近が出来ないで此様《こん》なに煩悶しているのに、隣の俗物は苦もなく日増しに女に親しむ様子で、物を言交《いいかわ》す五分間がいつか十分二十分になる。何だか知らんが、睦まじそうに密々話《ひそひそばなし》をしているような事もある。一度なんぞ女に脊中を叩かれて俗物が莞爾々々《にこにこ》している所を見懸けた。私は気が気でない……
藻掻いていると、確か女が来てから一週間目だったかと思う、朝からのビショビショ降《ぶ》りが昼過ても未だ止まない事があった。鬱陶敷《うっとうしく》て、気が滅入って、幾ら書いても思う様に書けないから、私はホッとして、頭を抱えて、仰向《あおむき》に倒れて茫然としていたが、
「早く如何《どう》かせんと不好《いかん》!」
と判然《はっきり》と独言《ひとりごと》をいって起反《おきかえ》った。独言《ひとりごと》は小説に関係した事ではないので、女の事なので。
すると、余り遠くでない、去迚《さりとて》近くでもない何処かで、ポツンポツンと意気な音《ね》がする。隣の家《うち》で能《よ》く琴を浚《さら》っているが、三味線
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