ゥったらと思われたが、併し何となく締りのあるキリッとした面相《かおだち》で、私は矢張《やっぱり》好《い》いと思った。名はお糸といってお神さんの姪だとか云う。皆下女からの復聞《またぎき》だ。
 何とかして一日も早く接近したいが、如何《どう》も顔を合せると、物が言えなくなる。昼間廊下で行逢った時など、女は小腰を屈《かが》めて会釈するような、せんような、曖昧な態度で摺脱《すりぬ》けて行く。其様《そん》な時に接近したがってる事は色にも出さずに、ヒョイと、軽く、些《ちッ》と話に入らッしゃい、とか何とか言ったら、最終《しまい》には来るようになるかも知れんとは思うけれど、然う思うばかりで、私の口は重たくて、ヒョイと、軽く、其様《そん》な事が言えない。
 度々|面《かお》を合せても物を言わんから、段々何だか妙に隔てが出来て来て、改めて物を言うのが最う変になって来る。此分だと、余程《よッぽど》何か変った事が、例えば、火事とか大地震とかがあって、人心の常軌を逸する場合でないと、隔ての関を破って接近されなくなりそうだ。ああ、初て部屋へ来た時、何故私は物を言わなかったろうと、千悔万悔《せんかいばんかい》、それ
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