洛エ郡何村《かんばらごおりなにむら》の産の鼻ひしゃげか何かで、私等《わしら》が国さでと、未だ国訛《くになまり》が取れないのになる。往々にして下女にも劣る。尤も是は少し他《た》に用事も有ったから、其用事を兼ねて私は絶えず触れていたが、どうしても、どう考えて見ても、是では喰い足らん。どうも素人《しろうと》の面白い女に撞着《ぶつか》って見たい。今なら直ぐ女学生という所だが、其時分は其様《そん》な者に容易に接近されなかったから、私は非常に煩悶していた。
 馬鹿なッ! 其様《そん》な事を言って、私は女房が欲しくなったのだ。

          五十

 人生の研究というような高尚な事でも、私なぞの手に掛ると、詰り若い女に撞着《ぶつか》りたいなぞという愚劣な事になって了う。普通の人なら青年の中《うち》は愚を意識して随分愚な真似もしようけれど、私は其を意識しなかった。矢張《やっぱり》私共でなければ出来ぬ高尚な事のように思って、切《しきり》に若い女に撞着《ぶつか》りたがっている中《うち》に、望む所の若い女が遂に向うから来て撞着《ぶつか》った。
 それは小石川の伝通院《でんづういん》脇の下宿に居る時で
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