ト一世を睥睨《へいげい》していた。
文学上では私は写実主義を執《と》っていた。それも研究の結果写実主義を是《ぜ》として写実主義を執《とっ》たのではなくて、私の性格では勢い写実主義に傾かざるを得なかったのだ。
写実主義については一寸《ちょっと》今の自然主義に近い見解を持って、此様《こん》な事を言っていた。
写実主義は現実を如実に描写するものではない。如実に描写すれば写真になって了う。現実の(真《しん》とは言わなかった)真味を如実に描写するものである。詳しく言えば、作家のサブジェクチウィチー即ち主観に摂取し得た現実の真味を如実に再現するものである。
人生に目的ありや、帰趨ありや? 其様《そん》な事は人間に分るものでない。智の力で人生の意義を掴《つか》まんとする者は狂せずんば、自殺するに終る。唯人生の味《あじわい》なら、人間に味える。味っても味っても味い尽せぬ。又味わえば味わう程味が出る。旨い。苦中にも至味《しみ》はある。其|至味《しみ》を味わい得ぬ時、人は自殺する。人生の味いは無限だけれど、之を味わう人の能力には限りがある。
唯人は皆同じ様に人生の味《あじわい》を味わうとは言えぬ
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