zうなると、世間の注目は私一身に叢《あつ》まっているような気がして、何だか嬉しくて嬉しくて耐《たま》らないが、一方に於ては此評判を墜《おと》しては大変という心配も起って来た。で、平生は眼中に置かぬらしく言っていた批判家《ひひょうか》等《ら》に褒《ほめ》られたいが一杯で、愈《いよいよ》文学に熱中して、明けても暮れても文学の事ばかり言い暮らし、眼中唯文学あるのみで、文学の外《ほか》には何物もなかった。人生あっての文学ではなくて、文学あっての人生のような心持で、文学界以外の人生には殆ど何の注意も払わなかった。如何なる国家の大事が有っても、左程胸に響かなかった代り、文壇で鼠がゴトリというと、大地震の如く其を感じて騒ぎ立てた。之を又|真摯《しんし》の態度だとかいって感服する同臭味《どうしゅうみ》の人が広い世間には無いでもなかったので、私は老人がお宗旨に凝るように、愈《いよいよ》文学に凝固《こりかた》まって、政治が何だ、其日送りの遣繰仕事《やりくりしごと》じゃないか? 文学は人間の永久の仕事だ。吾々は其高尚な永久の仕事に従う天の選民だと、其日を離れて永久が別に有りでもするような事を言って、傲然とし
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