ィこ》っていた。其癖批評家の言う所で流行の趨《おもむ》く所を察して、勉めて其に後れぬようにと心掛けていた……いや、心掛けていたのではない、其様《そん》な不見識な事は私の尤も擯斥《ひんせき》する所だったが、後《あと》から私の行為を見ると矢張《やっぱり》然う心掛けたと同然になっている。

          四十八

 久《しば》らく文壇を彷徨《うろうろ》している中《うち》に、当り作が漸く一つ出来た。批評家等は筆を揃えて皆近年の佳作だと云う。私は書いた時には左程にも思わなかったが、然う言われて見ると、成程佳作だ。或は佳作以上で、傑作かも知れん。私は不断紛々たる世間の批評以外に超然としている面色《かおつき》をしていて、実は非難《けな》されると、非常に腹が立って、少しでも褒《ほ》められると、非常に嬉しかったのだ。
 当り作が出てからは、黙っていても、雑誌社から頼みに来る、書肆《しょし》から頼みに来る。私は引張凧《ひっぱりだこ》だ……トサ感じたので、なに、二三軒からの申込が一|時《じ》一寸《ちょっと》累《かさ》なったのに過ぎなかった。
 嬉しかったので、調子に乗って又書くと、又評判が好《い》い。
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