tを看合《みあわ》せると急いで俯向《うつむ》いて了う癖がある。通されたのは二階の六畳の書斎であったが、庭を瞰下《みおろ》すと、庭には樹から樹へ紐《ひも》を渡して襁褓《おしめ》が幕のように列べて乾《ほ》してあって、下座敷《したざしき》で赤児《あかご》のピイピイ泣く声が手に取るように聞える。
私は甚《ひど》く軽蔑の念を起した。殊に庭の襁褓《おしめ》が主人の人格を七分方下げるように思ったが、求むる所があって来たのだから、質樸な風をして、誰《たれ》も言うような世辞を交《ま》ぜて、此人の近作を読んで非常に敬服して教えを乞いに来たようにいうと、先生畳を凝《じっ》と視詰《みつ》めて、あれは咄嗟《とっさ》の作で、書懸《かきかけ》ると親類に不幸が有ったものだから、とかいうような申訳めいた事を言って、言外に、落着いて書いたら、という余意を含める。私は腹の中で下らん奴だと思ったが、感服した顔をして媚《こ》びたような事を言うと、先生|万更《まんざら》厭な心持もせぬと見えて、稍《やや》調子付いて来て、夫から種々《いろいろ》文学上の事に就いて話して呉れた。流石《さすが》は大家と謂われる人程あって、驚くべき博覧で
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