/夕」、第3水準1−14−76]々《さッさ》と行って了う。偶《たまたま》立止る者が有るかと思えば、熟《つらつ》ら視て、金持なら、うう、貧乏人だと云う、学者なら、うう、無学な奴だと云う、詩人なら、うう、俗物だと云う、而《そう》して※[#「勹/夕」、第3水準1−14−76]々《さッさ》と行って了う。平生《へいぜい》尤も親しらしい面《かお》をして親友とか何とか云っている人達でも、斯うなると寄って集《たか》って、手《て》ン手《で》ンに腹《はら》散々《さんざ》私の欠点を算え立てて、それで君は斯うなったんだ、自業自得だ、諦め玉え々々と三度|回向《えこう》して、彼方《あちら》向いて※[#「勹/夕」、第3水準1−14−76]々《さっさ》と行って了う。私は斯ういう価値の無い平凡な人間だ。それを二つとない宝のように、人に後指を差されて迄も愛して呉れたのは、生れて以来|今日迄《こんにちまで》何万人となく人に出会ったけれど、其中《そのうち》で唯祖母と父母あるばかりだ。偉い人は之を動物的の愛だとか言って擯斥《けな》されるけれど、平凡な私の身に取っては是程有難い事はない。
 若し私の親達に所謂《いわゆる》教育が有
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