@ 四十一
其後《そのご》間もなく雪江さんのお婿さんが極《きま》った。お婿さんが極《きま》ると、私は何だか雪江さんに欺《あざむ》かれたような心持がして、口惜《くや》しくて耐《たま》らなかったから、国では大不承知であったけれど、口実を設けて体よく小狐《おぎつね》の家《うち》を出て下宿して了った。
馬鹿な事には下宿してから、雪江さんが万一《ひょッと》鬱《ふさ》いでいぬかと思って、態々《わざわざ》様子を見に行った事が二三度ある。が、雪江さんはいつも一向|鬱《ふさ》いで居なかった。反ッてお婿さんが極《きま》って怡々《いそいそ》しているようだった。それで私も愈《いよいよ》忌々《いまいま》しくなって、もう余り小狐へも足踏《あしぶみ》せぬ中《うち》に、伯父さんが去る地方の郡長に転じて、家族を引纏めて赴任して了ったので、私も終《つい》に雪江さんの事を忘れて了った。これでお終局《しまい》だ。
余り平凡だ下らない。こんなのは単純な性慾の発動というもので、恋ではない、恋はも少《ちッ》と高尚な精神的の物だと、高尚な精神的の人は言うかも知れん。然うかも知れん。唯私のような平凡な者の恋はいつも斯
前へ
次へ
全207ページ中133ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング