Qく此|怕《おそ》ろしい線を踏越した。踏越してから酔が醒めると何とも言えぬ厭な心持になったから、又酒の力を藉《か》りて強いて纔《わずか》に其不愉快を忘れていた。此様《こん》な厭な想いをして迄も性慾を満足させたかったのだ。是は相手が正当でなかったから、即ち売女《ばいじょ》であったからかというに、そうでない。相手は正当の新婦と相知る場合にも、人は大抵皆然うだと云う。殊に婦人が然うだという。何故だろう?
 之と縁のある事で今一つ分らぬ事がある。人は皆|隠《かく》れてエデンの果《このみ》を食《くら》って、人前では是を語ることさえ恥《はず》る。私の様に斯うして之を筆にして憚らぬのは余程力むから出来るのだ。何故だろう? 人に言われんような事なら、為《せ》んが好《い》いじゃないか? 敢てするなら、誰《たれ》の前も憚らず言うが好《い》いじゃないか? 敢てしながら恥《はず》るとは矛盾でないか? 矛盾だけれど、矛盾と思う者も無いではないか? 如何《どう》いう訳だ?
 之を霊肉の衝突というか? しからば、霊肉一致したら、如何《どう》なる? 男女相知るのを怕《おそ》ろしいとも恥かしいとも思わなくなるのか? 畜
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