、私が両手に豆捩《まめねじ》を持って雀躍《こおどり》して喜ぶ顔を、祖母が眺めてほくほくする事になって了う。
斯うして私の小さいけれど際限の無い慾が、毎《いつ》も祖母を透《とお》して遂げられる。それは子供心にも薄々|了解《のみこめ》るから、自然家内中で私の一番|好《すき》なのは祖母で、お祖母《ばあ》さんお祖母さんと跡を慕う。何となく祖母を味方のように思っているから、祖母が内に居る時は、私は散々我儘を言って、悪たれて、仕度三昧《したいざんまい》を仕散らすが、留守だと、萎靡《いじけ》るのではないが、余程《よっぽど》温順《おとな》しくなる。
其癖《そのくせ》私は祖母を小馬鹿にしていた。何となく奥底が見透《みすか》されるから、祖母が何と言ったって、些《ちッ》とも可怕《こわ》くない。
それを又勝気の祖母が何とも思っていない。反《かえっ》て馬鹿にされるのが嬉しいように、人が来ると、其話をして、憎い奴でございますと言って、ほくほくしている。
両親も其は同じ事で、散々私に悩まされながら、矢張《やっぱり》何とも思っていない。唯影でお祖母《ばあ》さんにも困ると、お祖母《ばあ》さんの愚痴を零《こぼ》す
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