齊桙フ宏弁《こうべん》、自然に備わる抑揚|頓挫《とんざ》、或《あるい》は開き或は闔《と》じて縦横自在に言廻わせば、鷺《さぎ》も烏《からす》に成らずには置かぬ。哀《あわれ》むべし文三は竟《つい》に世にも怖《おそ》ろしい悪棍《わるもの》と成り切ッた所へ、お勢は手に一部の女学雑誌を把持《も》ち、立《たち》ながら読み読み坐舗《ざしき》へ這入て来て、チョイト昇に一礼したのみで嫣然《にっこり》ともせず、饒舌《しゃべり》ながら母親が汲《くん》で出す茶碗《ちゃわん》を憚《はばか》りとも言わずに受取りて、一口飲で下へ差措《さしおい》たまま、済まアし切ッて再《また》復《ふたた》び読みさした雑誌を取り上げて眺《なが》め詰めた、昇と同席の時は何時でもこうで。
「トいう訳でツイそれなり鳧《けり》にしてしまいましたがネ、マア本田さん、貴君《あなた》は何方《どっち》が理屈だとお思なさる」
「それは勿論内海が悪い」
「そのまた悪《わり》い文三の肩を持ッてサ、私《あたし》に喰ッて懸ッた者があると思召《おぼしめ》せ」
「アラ喰ッて懸りはしませんワ」
「喰ッて懸らなくッてサ……私はもうもう腹が立て腹が立て堪《たま》らなかッ
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