「チョッ解らないネー、今までの文三と文三が違います。お前にゃア免職になった事が解らないかエ」
「オヤ免職に成ッてどうしたの、文さんが人を見ると咬付《かみつ》きでもする様になったの、ヘーそう」
「な、な、な、なんだと、何とお言いだ……コレお勢、それはお前あんまりと言うもんだ、余《あんま》り親をば、ば、ば、馬鹿にすると言うもんだ」
「ば、ば、ば、馬鹿にはしません。ヘー私は条理のある所を主張するので御座います」
 ト唇を反らしていうを聞くや否《いな》や、お政は忽《たちま》ち顔色を変えて手に持ッていた長羅宇《ながらう》の烟管《きせる》を席《たたみ》へ放り付け、
「エーくやしい」
 ト歯を喰切《くいしば》ッて口惜《くちお》しがる。その顔を横眼でジロリと見たばかりで、お勢はすまアし切ッて座舗を立出でてしまッた。
 しかしながらこれを親子|喧嘩《げんか》と思うと女丈夫の本意に負《そむ》く。どうしてどうして親子喧嘩……そんな不道徳な者でない。これはこれ辱《かたじけ》なくも難有《ありがた》くも日本文明の一原素ともなるべき新主義と時代|後《おく》れの旧主義と衝突をするところ、よくお眼を止めて御覧あられ
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