下さるとは知らずして、貴嬢《あなた》に向ッて匿立《かくしだ》てをしたのが今更|耻《はず》かしい、アア耻かしい。モウこうなれば打散《ぶちま》けてお話してしまおう、実はこれから下宿をしようかと思ッていました」
「下宿を」
「サ為《し》ようかと思ッていたんだが、しかしもう出来ない。他人同様の私をかばって実の母親さんと議論をなすった、その貴嬢の御信切を聞ちゃ、しろと仰しゃッてももう出来ない……がそうすると、母親さんにお詫《わび》を申さなければならないが……」
「打遣《うっちゃ》ッてお置きなさいヨ。あんな教育の無い者が何と言ッたッて好う御座んさアネ」
「イヤそうでない、それでは済まない、是非お詫を申そう。がしかしお勢さん、お志は嬉しいが、もう母親さんと議論をすることは罷《や》めて下さい、私の為めに貴嬢を不孝の子にしては済まないから」
「お勢」
ト下坐舗の方でお政の呼ぶ声がする。
「アラ母親さんが呼んでお出でなさる」
「ナアニ用も何にも有るんじゃアないの」
「お勢」
「マア返事を為《な》さいヨ」
「お勢お勢」
「ハアイ……チョッ五月蠅《うるさい》こと」
ト起揚《たちあが》る。
「今話した事は皆
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