コリして、さて坐舗を見廻わし、
「オヤ大変片付たこと」
「余りヒッ散らかっていたから」
 ト我知らず言ッて文三は我を怪んだ。何故|虚言《そらごと》を言ッたか自分にも解りかねる。お勢は座に着きながら、さして吃驚《びっくり》した様子もなく、
「アノ今母親さんがお噺《はな》しだッたが、文さん免職におなりなすったとネ」
「昨日《きのう》免職になりました」
 ト文三も今朝とはうって反《かわ》ッて、今は其処どころで無いと言ッたような顔付。
「実に面目は有りませんが、しかし幾程《いくら》悔んでも出来た事は仕様が無いと思ッて今朝母親さんに御風聴《ごふいちょう》申したが……叱られました」
 トいって歯を囓切《くいしば》ッて差俯向《さしうつむ》く。
「そうでしたとネー、だけれども……」
「二十三にも成ッて親一人楽に過す事の出来ない意久地なし、と言わないばかりに仰《おっ》しゃッた」
「そうでしたとネー、だけれども……」
「成程私は意久地なしだ、意久地なしに違いないが、しかしなんぼ叔母甥の間柄《あいだがら》だと言ッて面と向ッて意久地なしだと言われては、腹も立たないが余《あんま》り……」
「だけれどもあれは母親
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