を言いながら再び将《まさ》に取旁付《とりかたづけ》に懸らんとすると、二階の上り口で「お飯《まんま》で御座いますヨ」ト下女の呼ぶ声がする。故《ことさ》らに二三度呼ばして返事にも勿躰《もったい》をつけ、しぶしぶ二階を降りて、気むずかしい苦り切ッた怖《おそ》ろしい顔色をして奥坐舗《おくざしき》の障子を開けると……お勢がいるお勢が……今まで残念口惜しいと而已《のみ》一途に思詰めていた事ゆえ、お勢の事は思出したばかりで心にも止めず忘れるともなく忘れていたが、今突然可愛らしい眼と眼を看合わせ、しおらしい口元で嫣然《にっこり》笑われて見ると……淡雪《あわゆき》の日の眼に逢《あ》ッて解けるが如く、胸の鬱結《むすぼれ》も解けてムシャクシャも消え消えになり、今までの我を怪しむばかり、心の変動、心底《むなそこ》に沈んでいた嬉《うれ》しみ有難みが思い懸けなくもニッコリ顔へ浮み出し懸ッた……が、グッと飲込んでしまい、心では笑いながら顔ではフテテ膳に向ッた。さて食事も済む。二階へ立戻ッて文三が再び取旁付に懸ろうとして見たが、何となく拍子抜《ひょうしぬ》けがして以前のような気力が出ない。ソッと小声で「大丈夫」と言ッ
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