で、イヤハヤ何とも言様がない。
「文さんどうかお為《し》か、大変顔色がわりいヨ」
「イエどうも為ませぬが……」
「それじゃア疾《はや》くお為ヨ。ソレ御覧な、モウ八時にならアネ」
「エーまだお話し……申しませんでしたが……実は、ス、さくじつ……め……め……」
息気《いき》はつまる、冷汗は流れる、顔は※[#「赤+報のつくり」、50−8]《あか》くなる、如何《いか》にしても言切れぬ。暫《しば》らく無言でいて、更らに出直おして、
「ム、めん職になりました」
ト一思いに言放ッて、ハッと差俯向《さしうつむ》いてしまう。聞くと等しくお政は手に持ッていた光沢布巾《つやぶきん》を宙に釣《つ》るして、「オヤ」と一|声《せい》叫んで身を反らしたまま一句も出《い》でばこそ、暫らくは唯《ただ》茫然《ぼうぜん》として文三の貌《かお》を目守《みつ》めていたが、稍《やや》あッて忙《いそが》わしく布巾を擲却《ほう》り出して小膝《こひざ》を進ませ、
「エ御免にお成りだとエ……オヤマどうしてマア」
「ど、ど、どうしてだか……私《わたくし》にも解りませんが……大方……ひ、人減《ひとべ》らしで……」
「オーヤオーヤ仕様がな
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