め、
「オヤもう十一時になるヨ、鍋の寐言を言うのも無理はない、サアサア寝ましょう寝ましょう、あんまり夜深しをするとまた翌日《あした》の朝がつらい。それじゃア文さん、先刻《さっき》の事はいずれまた翌日《あした》にも緩《ゆっく》りお咄しましょう」
「ハイ私も……私も是非お咄し申さなければならん事が有りますが、いずれまた明日《みょうにち》……それではお休み」
 ト挨拶《あいさつ》をして文三は座舗《ざしき》を立出《たちい》で梯子段《はしごだん》の下《もと》まで来ると、後《うしろ》より、
「文さん、貴君《あなた》の所《とこ》に今日の新聞が有りますか」
「ハイ有ります」
「もうお読みなすッたの」
「読みました」
「それじゃア拝借」
 トお勢は文三の跡に従《つ》いて二階へ上る。文三が机上に載せた新聞を取ッてお勢に渡すと、
「文さん」
「エ」
 返答はせずしてお勢は唯《ただ》笑ッている。
「何です」
「何時《いつう》か頂戴《ちょうだい》した写真を今夜だけお返し申ましょうか」
「何故《なぜ》」
「それでもお淋《さみ》しかろうとおもって、オホオホ」
 ト笑いながら逃ぐるが如く二階を駆下りる。そのお勢の後姿
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