いくら》母親《おっか》さんの機に入ッたからッて肝腎のお前さんの機に入らなきゃア不熟の基《もと》だ。しかしよくお話しだッた。実はネお前さんのお嫁の事に就《つい》ちゃア些《ち》イと良人《うち》でも考えてる事があるんだから、これから先き母親さんがどんな事を言ッておよこしでも、チョイと私に耳打してから返事を出すようにしておくんなさいヨ。いずれ良人《うち》でお話し申すだろうが、些イと考えてる事があるんだから……それはそうと母親さんの貰いたいとお言いのはどんなお子だか、チョイとその写真をお見せナ」といわれて文三はさもきまりの悪るそうに、「エ写真ですか、写真は……私の所には有りません、先刻《さっき》アノ何が……お勢さんが何です……持ッて往ッておしまいなすった……」
 トいう光景《ありさま》で、母親も叔父夫婦の者も宛《あて》とする所は思い思いながら一様に今年の晩《く》れるを待詫《まちわ》びている矢端《やさき》、誰れの望みも彼れの望みも一ツにからげて背負ッて立つ文三が(話を第一回に戻して)今日思懸けなくも……諭旨免職となった。さても星※[#「((危−厄)/(帚−冖−巾)+攵)/れんが」、第4水準2−79
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