みよいに、何故人はそう住み憂《う》く思うか、殆《ほとん》どその意《こころ》を解し得まい※[#白ゴマ点、211−10]また人の老やすく、色の衰え易いことを忘れて、今の若さ、美しさは永劫《えいごう》続くように心得て未来の事などは全く思うまい、よし思ッたところで、華かな、耀《かがや》いた未来の外は夢にも想像に浮ぶまい。昇に狎《な》れ親んでから、お勢は故《もと》の吾を亡《な》くした、が、それには自分も心附くまい※[#白ゴマ点、211−13]お勢は昇を愛しているようで、実は愛してはいず、只昇に限らず、総て男子に、取分けて、若い、美しい男子に慕われるのが何《なに》となく快いので有ろうが、それにもまた自分は心附いていまい。これを要するに、お勢の病《やまい》は外《ほか》から来たばかりではなく、内からも発したので、文三に感染《かぶ》れて少し畏縮《いじけ》た血気が今外界の刺激を受けて一時に暴《あ》れだし、理性の口をも閉じ、認識の眼を眩《くら》ませて、おそろしい力を以《もっ》て、さまざまの醜態に奮見するので有ろう。若しそうなれば、今がお勢の一生中で尤《もっと》も大切な時※[#白ゴマ点、212−2]|能《よ》
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