を曇らして、冷淡になって、余り口数もきかず、総て仲のわるい従兄妹《いとこ》同士のように、遠慮気なく余所々々《よそよそ》しく待遇《もてな》す。昇はさして変らず、尚お折節には戯言《ざれごと》など云い掛けてみるが、云ッても、もウお勢が相手にならず、勿論嬉しそうにも無く、ただ「知りませんよ」と彼方《あちら》向くばかり。それ故《ゆえ》に、昇の戯《ざれ》ばみも鋒尖《ほこさき》が鈍ッて、大抵は、泣眠入《なきねい》るように、眠入ッてしまう。こうまで昇を冷遇する。その代り、昇の来ていない時は、おそろしい冴えようで、誰彼の見さかいなく戯《たわぶ》れかかッて、詩吟するやら、唱歌するやら、いやがる下女をとらえて舞踏の真似をするやら、飛だり、跳ねたり、高笑をしたり、さまざまに騒ぎ散らす。が、こう冴えている時でも、昇の顔さえ見れば、不意にまた眼の中《うち》を曇らして、落着いて、冷淡になッて、しまう。
 けれど、母親には大層やさしくなッて、騒いで叱られたとて、鎮《しず》まりもしないが、悪《にく》まれ口もきかず、却《かえ》ッて憎気なく母親にまでだれかかるので、母親も初のうちは苦い顔を作ッていたものの、竟《つい》には、
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