どうかこうか釣込まれて、叱る声を崩して笑ッてしまう。但し朝起される時だけはそれは例外で、その時ばかりは少し頬を脹《ふく》らせる※[#白ゴマ点、206−14]が、それもその程が過ぎれば、我から機嫌を直して、華やいで、時には母親に媚《こ》びるのかと思うほどの事をもいう。初の程はお政も不審顔をしていたが、慣れれば、それも常となッてか、後には何とも思わぬ様子で有ッた。
 そのうちにお勢が編物の夜稽古《よげいこ》に通いたいといいだす。編物よりか、心|易《やす》い者に日本の裁縫を教える者が有るから、昼間|其所《そこ》へ通えと、母親のいうを押反して、幾度《いくたび》か幾度か、掌《て》を合せぬばかりにして是非に編物をと頼む。西洋の処女なら、今にも母の首にしがみ付いて頬の辺《あたり》に接吻《せっぷん》しそうに、あまえた強請《ねだ》るような眼付で顔をのぞかれ、やいやいとせがまれて、母親は意久地なく、「ええ、うるさい! どうなと勝手におし」と賺《すか》されてしまッた。
 編物の稽古は、英語よりも、面白いとみえて、隔晩の稽古を楽しみにして通う。お勢は、全体、本化粧が嫌いで、これまで、外出《そとで》するにも、薄
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