、いざ昇と顔を合せると、どうももうそうはいかないと云いそうな調子で。いう事にさしたる変りも無いが、それをいう調子に何処か今までに無いところが有ッて、濁ッて、厭味を含む。用も無いに坐舗を出たり、はいッたり、おかしくも無いことに高く笑ッたり、誰やらに顔を見られているなと心附きながら、それを故意《わざ》と心附かぬ風《ふり》をして、磊落《らいらく》に母親に物をいッたりするはまだな事、昇と眼を見合わして、狼狽《うろたえ》て横へ外らしたことさえ度々《たびたび》有ッた。総《すべ》て今までとは様子が違う、それを昇の居る前で母親に怪しまれた時はお勢もぱッと顔を※[#「赤+報のつくり」、205−14]《あか》めて、如何《いか》にも極《きま》りが悪そうに見えた。が、その極り悪そうなもいつしか失《う》せて、その後は、昇に飽いたのか、珍らしくなくなったのか、それとも何か争《いさか》いでもしたのか、どうしたのか解らないが、とにかく昇が来ないとても、もウ心配もせず、来たとて、一向構わなくなッた。以前は鬱々としている時でも、昇が来れば、すぐ冴《さ》えたものを、今は、その反対で、冴えている時でも、昇の顔を見れば、すぐ顔
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