立派な官員さん」でも夫に持ッて親に安楽をさせることで有ろうと云ッて、嘲《あざ》けるように高く笑う。見よう見真似に娘までが、お勢の方を顧みて、これもまた嘲けるようにほほと笑う。お勢はおそろしく赤面してさも面目なげに俯向いたが、十分も経《たた》ぬうちに座舗《ざしき》を出てしまッた。我部屋へ戻りてから、始めて、後馳《おくればせ》に憤然《やッき》となッて「一生お嫁になんぞ行くもんか」と奮激した。
客は一日打くつろいで話して夜《よ》に入《い》ッてから帰ッた。帰ッた後に、お政はまた人の幸福《しあわせ》をいいだして羨やむので、お勢はもはや勘弁がならず、胸に積る昼間からの鬱憤《うっぷん》を一時に霽《はら》そうという意気込で、言葉鋭く云いまくッてみると、母の方にも存外な道理が有ッて、ついにはお勢も成程と思ッたか、少し受大刀《うけだち》になッた。が、負けじ魂から、滅多には屈服せず、尚おかれこれと諍論《いいあらそ》ッている。そのうちにお政は、何か妙案を思い浮べたように、俄《にわか》に顔色《がんしょく》を和げ、今にも笑い出しそうな眼付をして、「そんな事をお云いだけれども、本田さんなら、どうだえ? 本田さんで
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