そんな事を云ッて置きながら、ずうずうしく、のべんくらりと、大飯を食らッて……ているとは何所《どこ》まで押《おし》が重《おもた》いンだか数《すう》が知れないと思ッて」
 昇は苦笑いをしていた。暫時《しばらく》して返答とはなく、ただ、「何しても困ッたもンだね」
「ほんとに困ッちまいますよ」
 困ッている所へ勝手口で、「梅本でござい」。梅本というは近処の料理屋。「おや家《うち》では……」とお政は怪しむ、その顔も忽《たちま》ち莞爾々々《にこにこ》となッた、昇の吩咐《いいつけ》とわかッて。
「それだからこの息子は可愛《かわい》いよ」。片腹痛い言《こと》まで云ッてやがて下女が持込む岡持の蓋《ふた》を取ッて見るよりまた意地の汚い言《こと》をいう。それを、今夜に限《かぎっ》て、平気で聞いているお勢どのの心持が解らない、と怪しんでいる間も有ればこそ、それッと炭を継《つ》ぐ、吹く、起こす、燗《かん》をつけるやら、鍋《なべ》を懸けるやら、瞬《またた》く間に酒となッた。
 あいのおさえのという蒼蠅《うるさ》い事の無《ない》代《かわ》り、洒落《しゃれ》、担《かつ》ぎ合い、大口、高笑、都々逸《どどいつ》の素《す》
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