ユー》 と云ッて今日教師に叱《しか》られた、それはこの時忘れていたのだから、仕方が無い。
「ときに、これは」と昇はお政の方を向いて親指を出してみせて、「どうしました、その後?」
「居ますよまだ」とお政は思い切りて顔を皺《しか》めた。
「ずうずうしいと思ッてねえ!」
「それも宜《いい》が、また何かお勢に云いましたッさ」
「お勢さんに?」
「はア」
「どんな事を?」
おッとまかせと饒舌《しゃべ》り出した、文三のお勢の部屋へ忍び込むから段々と順を逐《お》ッて、剰《あま》さず漏さず、おまけまでつけて。昇は顋《あご》を撫《な》でてそれを聴いていたが、お勢が悪たれた一段となると、不意に声を放ッて、大笑に笑ッて、「そいつア痛かッたろう」
「なにそン時こそ些《ちっと》ばかし可怪《おかし》な顔をしたッけが、半日も経《た》てば、また平気なものさ。なンと、本田さん、ずうずうしいじゃア有りませんか!」
「そうしてね、まだ私の事を浮気者だなンぞッて」
「ほんとにそんな事も云たそうですがね、なにも、そんなに腹がたつなら、此所《ここ》の家に居ないが宜じゃ有りませんか。私ならすぐ下宿か何かしてしまいまさア。それを、
前へ
次へ
全294ページ中254ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング