何が何だか、訳が解りゃアしません」
 少ししらけた席の穴を填《うめ》るためか、昇が俄《にわ》かに問われもせぬ無沙汰《ぶさた》の分疏《いいわけ》をしだして、近ごろは頼まれて、一|夜《よ》はざめに課長の所へ往《いっ》て、細君と妹に英語の下稽古をしてやる、という。「いや、迷惑な」と言葉を足す。
 と聞いて、お政にも似合わぬ、正直な、まうけに受けて、その不心得を諭《さと》す、これが立身の踏台になるかも知れぬと云ッて。けれども、御弟子が御弟子ゆえ、飛だ事まで教えはすまいかと思うと心配だと高く笑う。
 お勢は昇が課長の所へ英語を教えに往くと聞くより、どうしたものか、俄かに萎《しお》れだしたが、この時母親に釣《つ》られて淋《さび》しい顔で莞爾《にっこり》して、「令妹の名は何というの?」
「花とか耳とか云ッたッけ」
「余程出来るの?」
「英語かね? なアに、から駄目だ。Thank《サンク》 you《ユー》 for《フォア》 your《ユアー》 kind《カインド》 だから、まだまだ」
 お勢は冷笑の気味で、「それじゃアア……」
 I《アイ》 will《ウィル》 ask《アスク》 to《ツー》 you《
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